私は、水濡れと高湿で機嫌も体調も凄まじく悪くなる面倒な体質。
だから、絶対手放せない処方があります。
それは、芳香化湿剤という香りで濕を追い払う処方の一群です。
平胃散は、蒼朮、厚朴、陳皮、甘草という3種類の生薬から構成される有名な処方。
この4種の生薬微粉末を混合し、生姜と大棗の煎じ液で服用すれば、湿気で重だるい、胃腸の具合が良くない場合、即効で調子が良くなります。
そのため、私はいつも生薬末を調合していつでも飲めるように平胃散の壜を作って常備しています。
平胃散に配合される生薬に、厚朴という生薬があります。
この厚朴という生薬は、モクレン科モクレン属シナホオノキという植物の樹皮を用います。
この生薬は、私の大好きな香りの生薬の一つです。独特なウッディーノートでベースノートになるような素敵な香りです。満開の花は、熟したバナナのようなトーンの高いフローラルノートで1輪だけでもあたり一面香りで満たされています。花の大きさは、人の頭ほどの大きさで非常に圧巻です。
この植物の親戚が、日本でも自生していています。それは、ホオノキ(Magnolia obovata)で、朴葉を郷土料理(朴葉寿司、朴葉餅、朴葉味噌、朴葉焼き など)に使ったり生活に密着した植物です。また、厚朴の代用生薬に樹皮を和厚朴として用います。
ホオノキの花にも強い香りがあり、熟した桃とマンゴーとバナナとイチゴをミックスしたような芳醇な優しい香りがします。
とても大きな木で、葉も大きく広い庭があれば一本植えたい植物です。
シナホオノキ Magnolia officinalis 生薬名:厚朴(部位:樹皮)
しかし、梅雨の最盛期になると高湿で低温という嫌な天気になる場合があります。もう、そうなったら最悪です。 天中殺です。大殺界です。体は重だるいし、浮腫むし、何もしたくないし、満員電車に乗る気も起きないし、仕事も嫌だ。
でも、おまんまを食べないといけないから、仕事に行く・・・頑張って・・・・藿香正気散を飲んで・・・
藿香正気散は、素敵な処方です。
藿香(カッコウ)というのは、お線香や練香など日本のお香によく用いられる生薬。アロマテラピーでも利用されるパチュリーの事なんです。
アロマテラピーは、揮発性成分しか用いませんのではっきり言って、湿気を追い払うという本当の効果はあまり望めないかもしれません。しかし、粉末または、煎じ薬という形態なら高分子の化合物、その配糖体、多糖類などが経口摂取されますので期待大です。
藿香正気散の処方は、
藿香、紫蘇、白芷、大腹皮、茯苓、半夏、白朮、陳皮、厚朴、桔梗、炙甘草の10種類の生薬微粉末を混合し、生姜と大棗の煎じ液で服用します。
私は、これらの生薬を所定分量秤量して煎じて、温かいうちに飲みます。
この藿香正気散は、とっても藿香の香りがします。お線香を飲んでいるみたいだけど甘草の甘さや陳皮のヘスペリディック的香気や生姜・紫蘇・厚朴のオリエンタルスパイシーノートが調和し不思議とすーっとしてお腹から体のだるさが抜ける感じ!
素敵な香りの処方です。 ぜひお試しあれ!
参考資料
太平恵民和剤局方より
卷之三 治一切氣
平胃散
治脾胃不和,不思飲食,心腹脅肋脹滿刺痛,口苦無味,胸滿短氣,嘔噦惡心 酸,面色萎黃,肌體瘦弱,怠惰嗜臥,體重節痛,常多自利,或發霍亂,及五噎八 反胃,並宜服。
蒼朮(去粗皮,米泔浸二日,五斤) 濃朴(去粗皮,薑汁製,炒香) 陳皮(去白,各三斤)
上為細末。每服二錢,以水一盞,入生薑二片,乾棗二枚,同煎至七分,去薑、棗,帶 熱服,空心,食前。入鹽一捻,沸湯點服亦得。常服調氣暖胃,化宿食,消痰飲,辟風、寒 、冷、濕四時非節之氣。
卷之二〔續添諸局經驗秘方〕
藿香正氣散
治傷寒頭疼,憎寒壯熱,上喘咳嗽,五勞七傷,八般風痰,五般膈氣,心 嘔惡,氣瀉霍亂,臟腑虛鳴,山嵐瘴瘧,遍身虛腫;婦人產前、產後,血氣刺 並宜治之。
大腹皮 白芷 紫蘇 茯苓(去皮,各一兩) 半夏曲 白朮 陳皮(去白) 濃朴(去粗皮)
上為細末。每服二錢,水一盞,薑錢三片,棗一枚,同煎至七分,熱服。如欲出汗,衣 被蓋,再煎並服。