私の一番好きな香りがこの金木犀です。
金木犀の香りは、ほかのどの植物も作り出せない独特なフローラルノートを持っています。
この金木犀の天然香料は たいへん高価な香料で取り扱っているお店が少ない貴重なものです。
アブソリュートか、超臨界二酸化炭素抽出のものがあります。香りは、アブソリュートが力強くオイルの色は黄色を帯びた暗緑色です。また、超臨界二酸化炭素抽出は、咲き誇る金木犀そのものの軽やかで爽やかな香りがします。
大学院時代に生薬・天然薬物学研究室で金木犀をたくさん摘んでn-ヘキサンで抽出し、エバポレーターでn-ヘキサンを溜去してアブソリュートを作りました。オイルは花と同じオレンジ色で生花の生き生きとした力強い香りのものが出来て感動したのを覚えています。
この金木犀の香料を配合した香水があります。
それは、GUERLAINのパープルファンタジー(2000年発売)です。
このパープルファンタジーは、金木犀の香りそのものではなく、甘いパウダリーノートとウッディーノートが奏でる幻想的な香りでした。
図2:GUERLAIN PURPLEFANTASY EDT
(2000年限定発売)
(2000年限定発売)
その後2004年にパープルファンタジーは、ビーボトルで復活し限定販売されました。
日本では、帝国ホテルのGUERLAINブティックでのみの販売で、2000年発売のものよりもフルーティーな香りのEDPで復活しました。
図3:GUERLAIN エクスクルーシブフレグランス パトリモワンヌ
このシリーズで PURPLEFANTASY EDPが復刻(2004年)
この金木犀は、オリーブやライラック、ジャスミンと同じモクセイ科(OLEACEAE)です。
このモクセイ科の植物は、私の心を鷲掴みする香りのよい花を咲かせるグループです。
モクセイ属モクセイ(ギンモクセイ)の変種は、魅力的な香りでキンモクセイとは香りの雰囲気が違い趣深いです。
銀木犀の匂いは金木犀と違いやさしく静かで甘い香りです。金木犀が『陽』ならば銀木犀は、『陰』といった感じでしょうか。咲く時期も、金木犀よりも1~2週間遅く咲きます。
図4:モクセイ (別名:ギンモクセイ Osmanthus fragrans)
そして、あまり見かけないモクセイにウスギモクセイがあります。
香りは、金木犀に近く華やかです。準絶滅危惧の植物だそうです。
このウスギモクセイは、実が成る株がありました。実は、小さなオリーブみたいな実がたくさん実っていました。
図5:ウスギモクセイ (Osmanthus fragrans var. aurantiacus f. thunbergii )
そして、11月中旬頃に咲くのがヒイラギです。
この香りは、また格別に素晴らしい香りです。
葉は、ギザギザの触ると痛い棘の形をしていますが、花は金木犀のようにたくさん咲きます。
香りは、スズランとオオバナソケイ(香料を採るジャスミン:Jasminum grandiflorum ) を足して2で割ったような涼やかで甘い香り。
葉は、非常に棘が鋭いので家に邪気を寄せ付けない強力な邪気払いの植物だと思います。節分にイワシの頭と柊を飾る風習や白魔術での魔除けなどに使用されます。
実際、私の実家の玄関横(裏鬼門)に50年近く育てているヒイラギの大木があり、生まれてこのかた厄災らしいものに出会っていません。ヒイラギは、素敵な植物ですね。
金木犀の時期にやりたいのは、桂花烏龍を作ることです。
金木犀の花を摘んで、凍頂烏龍茶と一緒にビンなどの容器に入れて香りを吸着させます。さらに食品乾燥用のシリカゲルをビンに一緒に入れてしばらく放置すれば完成です。
桂花烏龍茶を作るというのは、1年中いつでも大好きな金木犀の香りを楽しめる方法です。
売られている桂花烏龍は、茶葉がクズなのと香りがなんだかおかしいので等級の高い凍頂烏龍茶をベースにした手作りに限ります!!!
図7:金木犀の花を摘み取ったもの
図8:金木犀の花と凍頂烏龍茶(翠玉)を混ぜたところ
図9:金木犀の生花と凍頂烏龍茶(翠玉)を淹れたもの
桂花烏龍(生花)バージョンは、この時期しか楽しめないスペシャルな香りのお茶なので是非チャレンジしてみてください。この感激は、なかなか得られない体験だと思います。
因みに、金木犀の花は、薬効があり生薬では下記の作用があります。
生薬名:桂花(別名:木犀花)
性:温
味:辛
効能:散寒破結、化痰止咳、散瘀
歯の痛み、痰が多く咳で息苦しい状態、腸風血痢、疝瘕、口臭および生理が止まり腹痛があるものを治療する。